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作品紹介

あらすじ

東部最大規模の警護会社P3S。
新入りのジュンはそこで、看板スターであるグレイ・ラブストックと最悪の出逢いを果たす。
グレイはジュンのことをレディ呼ばわりした上に、なんとしてでもP3Sを辞めさせたいらしい。
けれど、ジュンは気づいていた。いつの間にか、グレイのことばかり考えている自分に。
そんなときグレイのパートナーとして初めての任務を言い渡される。
任務は順調に思えた矢先、ジュンは卑怯な罠にかかってしまい!?
ボディガードシリーズ、文庫になって復活!
書き下ろし『ティーカップ』収録。

人物紹介
インタビュー

文庫『薔薇とボディガード』はじめ、作品に関する質問です。

8月6日、文庫になって再登場の『薔薇とボディガード』が発売となります。今の率直なお気持ちを聞かせてください。

えーとですね。物書きの皆さん大なり小なり似たようなものかとも思うんですけど、過去作ってものは、読み返すと『あううううっ』(思わず喉を押さえ)(もしくは頭を抱え)穴があったら入りたい、手近なところに穴がなければDIY行ってスコップ買ってきてそのへんに穴掘ってでも入りたい…ってくらい、気恥ずかしいものがあったりするんですよ、もー。こっぱずかしくってどうしたらいいんだかわからない。しかも十年以上前の文章でございますよ。悶絶しないのが奇跡のようです。でもでも、顔を覆った指をそうっと開けてこわごわ新しい表紙を拝見して、文庫化のことまことにありがたく、かたじけなく、言うべき言葉も見つからないと思うくらい、感謝しています。イエ不真面目なんじゃないんです、真面目に、感謝してます本当に。

初出は2000年とありますが、久しぶりに作品を読み返されていかがでしたか?

BL浪人生活が長いもので、すっかり浦島りうとですから、BL的呼吸を忘れてて、我ながら『オイ…』と思いつつ読み返しましたです。以前、さまざまにご感想をいただき、その中に『たけうち小説にはラブシーンを期待しない』『それでもいい』意のお叱り&お褒め等々、いただいてましたが、今回、あらためて目を通して、我ながら『あうー、あうあう…』と意味不明のうめき声が出てしまうという。
それと、2001年からこっち、USAっつーのはちょいと難しい、気楽なふうには描き難いお国柄になりましたですね。USA国民の皆さんが悪いわけじゃないんでお気の毒であったり、しかしその後の数年間は逆に、なんぼなんでもそれはどうなのよ的アレであったりしたわけなので。
2000年には忌憚なく書けたシリーズでしたが、2013年となった現在からでは、この設定で(たけうちには)書けないお話なんじゃなかろうか。と思いますハイ。

ボディガードシリーズは各話ごとにモチーフがあります。今作はもちろん薔薇ですが、この薔薇に込められた意味を教えてください。

うーん、どうだったんだろう、当時の自分…正直、何を考えての『薔薇』だったのか、さだかには覚えてないんですよこれが。イギリス人ならそりゃもう、家と薔薇と犬だろうというふうに思い込みがあったやに思われます。当時よりさらに一昔前、イギリスにテイクザットというボーカルグループがあって(去年あたりから復活し、ずいぶんと大人びて、いい感じに歌っている五人組)、このグループのメンバーのひとりがビデオで(DVDではない時代…)、『大人になったら僕もいつか良い感じの家を持ち、休日にはガーデニングの本を読み…』てなことを言ってましたので、ふうん英国人つうのは今でも家と庭が大好きで、このように若い人でもガーデナーでありたいと思うものなのかと感心し、イギリスの庭ならやっぱり薔薇でしょうなあ。と、そういうノリで、象徴としてタイトルに持って来たんだと思います。
 ちなみに薔薇についての蘊蓄は、文庫の後書きにめいっぱい書きましたので(笑)ぜひそちらをお読みください。
 余談ですが、主人公が日米ハーフなので『サーターアンダギーとボディガード』でも良かったかとは思いますが、当時の編集さんにきっと『ダメです。たけうちさん、ボーイズラブ、なんですよ』と叱られたかもしれない(笑)。サーターアンダギー、大好きなお菓子ですけどもね。

メインキャラクターであるジュンは、東洋系の血が流れる心優しき青年です。反対にグレイは仕事に抜かりはなくすべてを完璧にこなす鉄面皮です。彼らはどのようにして生まれたキャラクターですか?

イギリス人…といってももちろん性格はさまざまで、陽気で粗忽で素っ頓狂な人もいるだろうし、悪くて救いがたい人もいるんではないか…とは思います。ただ、国民性として、『危機に瀕して慌てず騒がず取り乱さず、苦難にあっては忍耐強く、危機が去ったあとは何事もなかったかのように平常心』という要素があるんじゃないかと思うんですね。
 それと、やはり英米間のジョークの差ですか。アメリカのジョークは前頭葉型。イギリスは後側頭葉型。イギリス人のミュージシャンがアメリカへ行ってライブをして冗談を言うと、観客はぽかんとしている。というのを何かで観て、ははーん、これはイイ。よし使ったれ。と思ったわけです。たけうちの経験でも、イギリス人のジョークは、その場で意味がわからないことがあり、考えてからでないと、何が面白いのかわからない。考えてみても、どこが面白かったのかわからないことさえある。前後の状況を考えると、たぶんジョークだったんだろう、とは思うんだけど、あれのどこに、面白さがあったのよ? と、悩んだりする。でもって、何年もたってから『これか!』わかるときがあるんです。そのへんの、わかりにくさと可笑しさを、描いてみたかったんですね。
 はい? ジュンを日米ハーフに設定した理由ですか?
 それはまあ…大人の事情といいますか。(小声)。

P3Sにはふたりの他にもランディやレーナなど、魅力的なボディガードが多数在籍しています。中でもたけうち先生のお気に入りは誰でしょうか? またもしP3Sに依頼をするとしたら誰を指名しますか?

ボディガードを楯にして、彼らを危険な目に遭わせるくらいなら、たけうちなんぞは出歩かないほうがなんぼか世界のためではないかと思いますが…。
頼りになるのはダントツ、レーナでしょう。
警護を依頼するならジュンですねえ。たけうちには要望その他を明瞭に伝えうる英語力がありませんから、他の面々とは言葉が通じないだろうと思うし。

作中では、ジュンとグレイのストーリーだけではなく、もちろんクライアントを警護するなどボディガードとしてのシーンもたくさん描かれています。個性的なクライアントがたくさん登場していきますが、どのようなところから着想を得られているのでしょうか?

着想…うーん、どこから着想、うーん………思い出せない。けど、たしか  
1 警護嫌いなどの、警護しにくい人々。  
2 危険な警護が予想されると思しき人々。  
3 かつ、読者さんに、その難しさを『なるほど』と思っていただける職業の人々。  というあたりからピックアップ。
だったように思います。

今作には書き下ろし『ティーカップ』が収録されています。今後の作品にも書き下ろしが収録されるそうですが、書き下ろしのストーリーはすでに決まっているのでしょうか? もしくは書きたいお話などはありますか?

ございますとも。でもここではお話しいたしませぬ。あしからず。

『薔薇とボディガード』を読者のみなさまに読んでいただく上で、注目していただきたいシーンを教えてください。

2シーンありまして、
ひとつは、傷心のジュンがホテルでひとり、故郷アラスカの自然に思いを馳せるところ。
もうひとつは、夜半のバーでレーナとジュンがデートめいた会話をするシーン。

次回作は『星とボディガード』です。どのようなお話かご紹介をお願いいたします。

手っ取り早くいうと…ジュンと大企業の社長さんとでいろいろあって山登り。
今思えばゴメンナサイ読者様みたいなチョイスでした。すいません、もう一度穴掘り専用スコップ買いに行ってきます…。
かろうじてグレイがいるのでぎりぎりBLセーフ?(大汗)

たけうちりうと先生ご本人に関する質問です。

小説家になったきっかけを教えてください。

きっかけというと……。
むかーし、会社を辞めてからエッセーはそこそこ書き散らかしてまして、勢いで小説めいたものを書いて知り合いの漫画家さんに読んでもらったところ『どこかに出してみれば?』と勧められ、それじゃあというんで応募したら入賞した…という、いわばビギナーズラックでした。

ご執筆する上で影響を受けたりリスペクトしているもの(作家様、本、音楽、映画などなんでも)はありますか? 
理由もあわせて教えてください。

文章に関して、影響を受けたのはたぶん、子どもの頃から毎日のように観たり聴いたりしたNHKニュース、アナウンスメント、ということになるんじゃないかと思います。
創作上、どのような影響をどこから受けたかというと、これはもう誰かひとりから、あるいはどの作品からということはなく、今までの人生で見聞きしてきたありとあらゆるものごとから養分を貰ってきたし、加えて自身の経験などから抽出したりもします。
ですので、リスペクトの対象…これもちょっと絞れないというか、選べないといいますか。
あやふやな答えで、重ね重ねすみません。

どのようなきっかけでBLを書くようになりましたか?

デビューは約二十年前です。最初に担当してくださった編集さんから、
『やおい、大丈夫ですね?』
と訊かれ(そのころはBLのことをやおいと呼んでました)、
『やおいってなんだろう?』
 と思いはしましたが、ここで、
『やおい、ダメです』
 なんて答えたら、次がないだろうと察せられ、
『ハイ大丈夫です』
 答えておいて、あとで知り合いの漫画家さんに電話して、
『やおいって何?』
 尋ねたところ、
『口で説明してもわからないだろうから、みつくろって送ってあげる』
 ほどなくして雑誌と文庫本が送られてきた……。で、それ読んで青ざめたわけで。
 つまり、
『気づいたときにはすでにBL書き』(もどき?)
 だったのでした。

最近のマイブームはなんですか?

後北条氏研究を中心に、日本史を勉強中です。

小説を書かれる際に、大事にしていることや気をつけていることを教えてください。

本当に大事なことは文章にしないこと、あたりでしょうか。
それと、差別表現がないように、偏見のないように、気をつけています。
大事にしたいのは読者さんの読書中の幸福感。
BLはココロの休憩室。と、心がけています。

最後に、読者のみなさまにメッセージをお願いします。

十年の歳月を経て、ボディガードシリーズが文庫になりました。
北畠あけ乃様の麗しい新表紙とイラストでお届けします。
書き下ろし短編『ティーカップ』を添えました。
お楽しみいただけましたら幸いです。

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