文庫『夜明けの雲』はじめ、作品に対しての質問です。
8月6日に『夜明けの雲』が発売となります。梅野先生のデビュー作となりますが、今の率直なお気持ちをお聞かせください。
嬉しい半面、いよいよなんだなあとソワソワしています。
書いている間「ドッキリだったらどうしよう」と思っていたのですが、ようやく実感が湧いてきました。
特別仲が良かったわけではないふたりが同窓会で出会うところから物語は始まりますが、このお話を書こうと思ったきっかけを教えてください。
ボタンをかけ違えるくらいの些細な偶然やアクシデントで変わっていく日常を書きたいなと思ったのがそもそものきっかけです。
どちらかが一方的に想うのではなくどちらからともなく惹かれあっていくのがいいとか、そのためには同じ目線で話せるような間柄がいいと考えるうちに、初対面ではないけれど相手のことをよく知らない元同級生という設定になりました。
今作のメインキャラクター、小坂と岡田はタイプの違うふたりです。ふたりのキャラクターはどのように生まれたのでしょうか?
まずおおまかなストーリーを作ってからその流れに沿ってキャラクターを考えていくのですが、割と早い段階から小坂くんは「寂しがり屋なモテ男」というぼんやりしたイメージがありました。設定を詰めていくうちに見た目も性格もすっかり男前になってしまい、担当さんに何度も「どっちが攻めだかわからない」と言われました。
ちなみに小坂くんの勤務先は、アパレル業界で働く友人の「この業界の営業さんたちはみんなすごく恰好良くスーツを着てる」という言葉が決め手です。
一方の岡田くんは、小坂くんが惹かれそうな人を考えて見た目よりも包容力だと思い至り、詰めていくうちにどんな人でも思わず油断してしまうらい底抜けに優しい性格で、どちらかというと癒し系な…大型犬のような人になりました。小坂くんとは対照的なタイプにしようとした結果色々と情けないところが見え隠れしてしまい、これまた「どっちが受けだかわからない」と言われました。
小坂、岡田はもちろんのこと、今作には魅力的な男性がたくさんでてきます。その中でも梅野先生のお気に入りキャタクターは誰でしょうか? またご執筆中、難しかったキャラクターはいますか?
お気に入りのキャラクターは、小坂くんの上司の椎名さん。あんな人が上司だったらいいなあと思いながら書いていました。
難しかったのは岡田くん。大好きなタイプの攻めなんですが、自分の中のイメージと口調がなかなか一致しなくて苦労しました。
今作を書かれていて楽しかった点、苦労した点を教えてください。
楽しかったのは、3章の後半からラストまでの話がどんどん収束していくところを書いていた時です。
小坂くんがたくさん悩んで、迷って、時々へこたれながら少しずつ答えを掴んでいくのがなんというか自分のことのように嬉しかったです。
苦労したのは、登場人物たちがそれぞれ相手のどんなところに惹かれたのか、という点。具体的に考えようとすればするほどまとまらなくなり、担当さんに「○○のどこが好きなんですか?」と聞かれて言葉に詰まりました。
本編に納めきれなかったエピソードや、製作中の秘話などありましたらぜひ教えてください!
美味しいもの好きな岡田くんのために小坂くんが張り切って腕を振るう(うっかりケガしちゃうアクシデント付)というベタな展開や、高校時代に岡田君が好きだった子のエピソードも考えていたのですが、今回のストーリーにはそぐわない気がして入れませんでした。
制作中の秘話…というほどのことでもないのですが、消せるボールペンで書いていた原稿がノートパソコンのファンから出る熱風で消えてしまい、真っ青になりました。冷凍庫に入れたらかろうじて読めるくらいには復活してホッとしたのを今でも覚えています。
『夜明けの雲』を読者のみなさまに読んでいただく上で、注目していただきたいポイントを教えてください。
どちらかといえば静かな物語なので、登場人物たちの距離感や気持ちの移り変わりに注目してもらえたらいいなと思います。
作中、まったく違う場面であえて同じフレーズを使っているところがあるのですが、その「意味は違うけど同じフレーズ」に気付いてくれる人がいたら嬉しいです。
梅野はな先生ご本人に関する質問です。
PNの由来を教えてください。
たいした由来がないので言いにくいのですが、名前を考えたのが春だったので、
「梅の花」「桜の花」「桃の花」…と季節の花を思い浮かべてその中から選びました。
何かと梅味が好き、というのが決め手です…。
小説を描き始めたきっかけはなんですか?
昔から本を読むのは好きだったのですが「こんなのが読みたいのに見つからない!」と思ったことがキッカケだったような気がします。
梅野先生の好きなカップリングやシチェーションはなんですか? またそのどのようなところに萌えを感じますか?
性格的にはデコボコなのにお互いじゃなきゃダメ、なカップルが好きです。あと組み合わせはなんでもいいのですが、おじさんが好きです。40代半ばくらいからが美味しいと思います。
好きなシチュエーションは時代モノ。江戸後期~昭和初期くらい。イグサの匂いや着物の擦れる音、ゆらゆらと揺れる蝋燭の灯りなんかにそそられます。
萌えを感じるのは、相手を想うからこそ一歩引く、という姿勢を見た時。想いの深さ故なんだろうなと、想う方も想われる方もたまらなく愛しいです。
最後に、読者のみなさまにメッセージをお願いします。
この「夜明けの雲」が初めての商業作品になります。
まだまだ拙い部分も多いかもしれませんが、読み終えた時ちょっと幸せな気分になってもらえたらいいな。そんなことを考えながら書いていました。
誰か一人でもお気に入りのキャラクターが見つかったら嬉しいです。